水域に汚濁物が流入しても、自然の浄化作用によって汚濁物の濃度はしだいに減少していくものです。
浄化作用には、物理的作用、化学的作用、生物的作用の3つがあります。
物理的作用とは、水による希釈・拡散や沈殿などによって見かけ上の水中の汚濁物質濃度が減少することで、化学的作用とは、酸化、還元、凝集、吸着などの作用によって汚濁物質が無害なものに変化したり、水中に溶け出しにくくなったりすることです。
一方、生物的作用とは、汚濁物質が生物によって吸収・分解を受けることです。
クラゲは人を刺して皮膚を腫らしたりして人体に大きな被害をもたらすほかに、大量に発生すると漁業に打撃を与えたりして害になるばかりと思われるが、上記の浄化作用の生物学的作用の一つとして、汚染された海をきれいにする働きがあります。
汚染物質を浄化し、毒物を処理してくれるわけである。
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クラゲが水質を浄化するしくみ
クラゲが水をきれいにしてくれるのは、クラゲにエサ(ブラインシュリンプ)を与えてみる実験で確認されています。
エサを与えてしばらくすると、クラゲは粘液を出して、餌をからめとって食べたり、食べきれなかったエサや水中のゴミを包みこんだりします。
クラゲの傘の下部には粘液を出す器官があり、傘に刺激が加わると粘液が出るようになっています。
粘膜に包まれたものが海底まで沈んでいき、それらが深海や海底の生き物のエサになり、最終的に海をきれいにするというわけなのです。
このクラゲの粘液が浄化作用の重要な役割をしているのです。
まとめ
日本海にエチゼンクラゲの大群が押し寄せたという事件があって、その原因は、中国の海洋汚染によるものと解析され、クラゲは汚染された海を浄化するために発生した自然の仕組みであろうと推定されています。
大量発生で、漁業には影響が大きいが、元のきれいな海にしようとする生き物の本能の現れなのです。
クラゲの粘液の出る仕組みは十分解明されていないようですが、非常に優れたもので、応用価値のあるものと理解されています。